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「今日はバサントだよ。」 バサントを見せてもらいに、生徒の女の子の家に。 彼女はフウにとって唯一の女子生徒で、隣町ラーワルピンディーに住んでいる。 パキスタンっぽさ全開の、旧市街の、民家がひしめき合って立ち並んでいる地域。 彼女の家族に熱烈歓迎を受け、一通り親戚一同への挨拶に連れ回され、パキスタン人家族の勢いに圧倒され続けるが、バサントを見られるので心ウキウキ。 いよいよ屋根の上に上がって、バサント! バサントとは、“喧嘩凧のお祭り”のこと。 日本のようにノホホンと凧を揚げて正月気分に浸るのではなく、糸でお互いの凧を落とすのに闘志を燃やすのだ。 兵共(つわものども)は屋根の上に出て、 スピーカーでインド歌謡曲ををガンガンにかけ、プラスチックの強い糸で凧を揚げる。 凧はいたってシンプルな形。二本の竹ひごに薄い色紙を張っただけのもの。 何枚も用意しておいて、落とされてもまたすぐ控えの凧を揚げていく。“使い捨て”それがパキスタン流。 糸が鋭く、揚げている人の指が擦り切れてしまうので、お兄ちゃんたちは指にビニールテープをグルグルに巻いている。この時期の男の子の指には、糸でできた傷が勲章のようにあるものなのだ。 しかしながら、興奮すると限度を知らないパキスタン人。 毎年、屋根からの落下や、糸による指の切断ならまだしも、首の切断による死者が出てしまうので、政府として公にはバサントを禁止しているらしい。でもやってしまうのがパキスタン流。 旧市街のギュウギュウに家屋がひしめく町並みでは、屋根に上がって戦いいそむ男たちの姿が繰り広げられている。(この様な危険な糸は、ガラスの破片などを何度も塗りつけ、他の凧糸を切りやすくしている特別なものです。普通はただのプラスチックの糸です。) この時期、きつくなりかけた日光の水色の空に揚がるカラフルな凧の群れが、ラーワルピンディーの景色をかわいらしくさせていた。
by pakfu
| 2006-03-10 16:08
| 日常生活
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